【消費税「課税の適正化」項目への実務対応が急務に】
いわゆる95%ルールは25年4月以後開始する課税期間から適用 |
分割された平成23年度税制改正法の成立で、平成24年以後開始する課税期間から、課税売上高が5億円を超える事業者は、たとえ課税売上割合が95%以上であっても課税売上に対応する課税仕入れの税額のみを控除の対象とすることが確定した。
また、平成25年1月1日以後開始する事業年度等からは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である事業者のうち特定期間(前記の半年間)における課税売上高が1,000万円を超えるときは事業者免税点制度の適用はないこととされる。
なお、事業者免税点制度の改正は、当初法案では“平成24年10月1日以後に開始する事業年度等から適用”とされていたが、変更されているのでこの点に注意が必要。 |
仕入税額控除の改正:早急にシステム等の変更を |
実務上、仕入税額控除の見直しは影響が大きい。これまでは、課税売上高の金額の多寡に関係なく課税売上割合が95%以上であれば、課税仕入れ等の税額の全額を控除することができたが、平成24年4月1日以後開始する課税期間から、その課税期間の課税売上高が5億円を超えている場合には、課税売上に対応する課税仕入れの税額のみが控除の対象となる。。・
したがって、課税売上割合が95%以上である3月決算法人は、来年度からその期の課税売上高が5億円を超えるかどうを判定すると同時に、5億円を超える場合には、仕入れ控除税額を個別対応方式または一括比例配分方式により算出するシステム等の変更などの対応が必要となろう。
なお、個別対応方式又は一括比例配分方式により計算する際、届出等は不要だが、一括比例配分方式を選択した場合には、2年間継続して適用した後でなければ個別対応方式に変更することができない点にあらかじめ留意されたい。 |
課税売上割合の端数処理の新たな取り扱いは設けられず |
ところで編集部には、今回の改正に伴って、課税売上割合が99.99%であるなど限りなく100%に近い場合に、端数を切り上げて100%とみなす等の取り扱いが新たに設けられる可能性はないのか、という質問が実務家から寄せられた。
この点、課税売上割合の端数処理について新たな取り扱いが設けられることはないようだ。したがって、端的にいうと1円でも非課税売上がある場合には、課税売上割合は100%とならないため、仕入控除税額について個別対応方式又は一括比例配分方式で算出しなければならないことになるのだ。 |
免税点制度の改正:来年の上半期(特定期間)の課税売上高が判定基準に |
事業者免税点制度では、基準期間の課税売上高が1,000万円以下である事業者のうち前年の事業年度等の上半期の課税売上高が1,000万円を超える場合、その事業年度等において免税点制度の適用を受けることができないこととされた。
この改正法の適用時期は、平成25年1月1日以後開始する個人事業者のその年又は法人のその事業年度だ。本年1月25日に国会へ提出された所得税法等の一部を改正する法律案では、平成24年10月1日以後開始する事業年度等から適用するとされていたが、今回の法案で変更されている。
したがって、個人事業者の場合は、来年の上半期(平成24年1月1日~6月30日)の課税売上高が1,000万円を超える場合は平成25年分から課税事業者となる。
また、3月決算法人の場合は、来年度の上半期(平成24年4月1日~9月30日)の課税売上高が1,000万円を超える場合は、平成25年度の課税期間から課税事業者となる。 |
課税売上高と給与支払額のいずれか有利な方の選択が可能 |
なお、特定期間の課税売上高が1,000万円超であるか否かの判定については、事業者が特定期間中に支払った所得税法に規定する支払明細書に記載すべき給与等の金額に相当するものの合計額をもって、特定期間における課税売上高とすることができる。
つまり、課税売上高と支払給与額のいずれか有利な方を選択することが可能となる。したがって、課税売上高が1,000万円を超えている場合であっても、給与等の金額に相当するものの合計額が1,000万円以下である場合には、翌課税期間において事業者免税点制度の適用を受けることができる。 |
平成23年6月27日 週刊税務通信 No.3169 より |